説明不足であったため一部加筆訂正しました(2007.8.2)
2007 F3C世界選手権 競技観戦の基礎知識

F3C世界選手権のレポートをごらんになる方のために、どのような競技会なのかをより知っていただくために整理してみました。
なお、現行ルール及び主催者告知(Bulletin)を元に記載し、一部未確定事項については推定も加えてあります。競技開催後の選手ミーティングの結果で一部訂正があるかもしれません。

1.使用ルール
FAI F3Cルール(2006年版)による。(現行ルール PDFファイル 356KB)


予選ラウンド(第1ラウンド〜第4ラウンド)は 演技スケジュールA を使用する。
決勝ラウンド(フライオフと言う)には 演技スケジュールB を使用する。

2.ジャッジング
予選ラウンド
選手の演技は約10M離れた位置並んだ5名のジャッジにより採点されます。
一つの演技毎に演技の完成度に応じてジャッジペーパーに0〜10点(0.5点刻み)のマークを付けます。 その演技に対して5人のジャッジが付けた点のうち、最高点と最低点を切り捨てた、3名分の得点合計がその演技の得点(ジャッジ素点数とも言う)となります。
全演技のジャッジ素点の合計が選手にとってのそのラウンドのジャッジ素得点となります。

予選ラウンドの素点の最高点は、3人×10点×10演技=300点

決勝ラウンド
各演技に対して5人のジャッジが付けた点のうち、最高点と最低点を切り捨てた、3名分の得点合計がその演技の得点(ジャッジ素点数とも言う)となります。
全演技のジャッジ素点の合計が選手にとってのそのラウンドのジャッジ素得点となります。

決勝ラウンドの素点の最高点は、3人×10点×10演技=300点

注)10人ジャッジで行う場合
各演技に対して10人のジャッジが付けた点のうち、最高点二つと最低点二つを切り捨てた、6名分の得点合計がその演技の得点(ジャッジ素点数とも言う)となります。
全演技のジャッジ素点の合計が選手にとってのそのラウンドのジャッジ素得点となります。

決勝ラウンドの素点の最高点は、6人×10点×10演技=600点


3.ラウンド得点(スコア)
この大会に使用されるルール

各ラウンドの成績は、そのラウンドでの上位20%の人数(割り切れない場合は繰り上げる)もしくは12人のうち少ないい方の人数のジャッジ素点の平均点を500点に換算し、これを元に全選手のジャッジ素点を比率で換算して算出する。 

2つのフライトラインが使われるとき、得点は別に各々のフライトラインと各日毎に集計される。
その場合、平均点算出基礎人数は半数(割り切れない場合には繰り上げ)として扱う。



しかし、現行の正式ルールはこうなっています(H19年日本選手権もこれです)

各ラウンドの成績は、そのラウンドでのジャッジ素点の平均点を500点に換算し、全選手のジャッジ素点を比率で換算して算出されます。  ただし、平均点算出の基礎となるのは全ての演技を完了した選手の得点です。(例えば 1個の演技を完了しなかった場合はその選手の素点は平均点算出には使われません。  ただし、その選手もスコアは算出されます。 



なぜこのような議論になるのか?

KOMO注
今回の世界選手権では予選ラウンドのスコア算出時の500点のベースは上位12名ほどの選手の素点平均点合計となります。 これについては、本年度のCIAM総会での決議事項であり今回の世界選手権に適用される、現状ではいわば
ローカルルールです。
なぜ2006年からのルールである
全選手の平均点を500点のベースにする方式をとらないのかについては、2006年ルール開始直後のヨーロッパでの大会に端を発しています。 

予選ラウンドでは得点の低い選手が多くいるため予選ラウンドで全平均をベースにした場合、予選総合得点は高くなる傾向となります。 このこと自体はどの選手にとって問題点はありません。 しかしながら
予選ラウンドの総合得点が高くなることは決勝進出する15位までの選手にとっては大問題となります。 
ルールでは、予選総合成績(4ラウンドの内高い3つのラウンドの合計点)を1ラウンド分に再集計し決勝ラウンドへの持ち点(キャリーオーバー)とするため、
決勝進出15名については、予選成績を平均点500点法で再集計します。 
この結果、いままで高い点数をとっていたことがアダとなり、特にトップグループ5〜6名にとっては、高い点数の者が多いほど、全員が接近しているほど限りなく500点に向かって収束することとなり、7位付近の選手が500点、トップでも精々550点ほどになるはず。 

このことは、トップを争っている者にとっては
  
決勝ラウンドは難度の高いBパターンである
決勝の3ラウンドではもっと点差がつく(つけられる)
500点法ではより高い点数となる
(低い点数なので)予選持ち点は使えない
決勝の3ラウンドの合計点で勝負が決まるも同じ
ていうことは、もし決勝でエンストしたら勝ち目無しになるのか
そりゃねーだろー


そりゃーねーだろうと言ったかどうかは定かではありませんが
このことに遅ればせながら気づいた一部の選手が予選ラウンドを全平均で集計することにブチブチいいだしたのです。

伝え聞く話では2006年のヨーロッパ選手権の選手ミーティングは険悪な雰囲気だったとか(笑)

この後、やれ500点のベースとする選手は何人にすべきだ とか 2演技以上0点の場合のみ500点のベースから除外しろ だの意見が出てきたそうです。

2006年ルールができたとき、決勝進出者にとっては決勝ラウンドの成績が大きくウエイトを占めることは読めていたわけで、日本選手たちは別にこの件に関してはルールはルールとして受け入れていました。
日本選手は  決勝勝負 → 練習も機体の仕上げもB重視  は認識しています。


今回の世界選手権に向けていろいろな意見を加味した折衷案が、決勝進出選手と同じくらいの人数の平均値をベースにする方法となったようです。
今回の大会の場合、予選ラウンドでは上位12名の得点平均を500点の算出基礎とする。 しかも、二面進行の場合、半分の人数(6名?)の得点平均を500点の算出基礎とするようになっている...

平均点算出の素点平均が高くなればなるほどスコア(500分率点)は計算上低くなる。
要するに、決勝進出者15名にとっては、予選ラウンドの総合得点(キャリーオーバー)が決勝時のものと同程度なるようにしたい(決勝3ラウンドの得点のウエイトを極端に大きくしたくない)


ならいっそのこと決勝は決勝だけで集計した方がすっきりするとは思いますが...
(私見です)


ちなみにルール改定に関して、今後の議論の中心は 
1000点方式に戻そう だそうです。
来年度のCIAM総会に向けて提案されるとか。

1000点方式でも500点方式でもそれぞれ長所も欠点もあります。
後からブチブチ言い出して修正を加えるくらいなら500点方式は早くやめた方がよいのかも

(私見です)

4.予選ラウンドと団体成績
一カ国の出場選手は最大3人。 
全員が予選ラウンド1〜4に出場する権利を有し、各選手の予選ラウンド1〜4のうち一番低いラウンド得点を切り捨てた3ラウンド分の合計得点を合算したものが団体成績となり、団体順位が決定される。
(代表者が3名に満たない国は当然不利となる)


5.個人成績
選手の個人成績は、予選ラウンドと決勝ラウンドの総合で算出されます。
予選ラウンド1〜4のうち一番低いラウンド得点を切り捨てた3ラウンド分の合計得点が個人の予選ラウンド得点となります。  
この得点の上位15人の選手が決勝に出場できます。

決勝進出15名について、予選ラウンド得点を再度500分率に換算します。
決勝ラウンドは、決勝第1ラウンド〜第3ラウンドまで行われ、各ラウンドとも、
ジャッジ素点を500分率で換算し算出されます。
予選ラウンド得点、決勝1、決勝2、決勝3の4個の得点のうちもっとも低いものを切り捨てた3個の得点の合計が個人の最終成績となります。

6.予選ラウンド2面進行(その1)
今回の世界選手権で特徴的なのは予選ラウンドの2面での進行です。

第8回大会(ポーランド)までの世界選手権は、F3Cは1面(競技場1つ)での進行でした。
スケジュールAは、演技時間、調整時間等を考えると進行上は1時間あたり6名が限度です。
会場の位置と季節により日照時間が異なるものの、正味8時間が限度と考えられ、50名程度での競技であれば進行は可能です。  第8回 ポーランドでは、出場者60名以上、競技開始7時、終了18時でした。  
70名以上であれば、1面での予選ラウンドは物理的に不可能です。
この場合は2面以上で進行する必要が生じます。
1つのラウンドを長時間に渡って行った場合、もう一つの問題が発生します。  朝、昼、夕と飛行環境が異なりすぎる事への不公平感です。 これを解消すべく第1〜4ラウンドでは、選手の出場時間を均等に変更しますが問題は残ります。  
もう一つの問題はジャッジングです。  ジャッジはラウンド中交代できませんので(倒れれば別ですが...)長時間に渡り審査します。  ルールに照らして採点していくわけですが、人間が行えば比較での要素は拭えません。  朝早くから夕方まで、めちゃくちゃ上手い選手と????の選手が混在して出場する場合、長時間に渡ると全体として正確さを維持して審査できるかの不満感が残ってしまいます。

出場者が多くても、半日程度で終えられれば上記の不満要素は解消できます。
これを可能にするのが複数面での進行です。
ただし、ローカル大会のように選手が多いので2グループに分けて別のジャッジで同時にやって集計するような無茶なことは公式大会では出来ません。

複数面の進行の方法がルールブックに明文化されてはいませんが、ルールに準じて考えていけばいいわけです。 ”一つのラウンド中、飛行場もジャッジも同じ。” この原則が成立している限り1つのラウンドが2日にまたがったとしても成立すると考えられます。

予選ラウンドは、4ラウンドですから、これを4日間で行うと考えた場合、方法は次の3つです。

1. 1面でやる(出場者は40〜50名が限度)
2. ジャッジグループを2グループ、飛行場を2面使って進行する。(いわゆる2面方式)
3. ジャッジグループを4グループ、飛行場を4面使って進行する。(出場者が100名以上の場合)


今回の世界選手権では、予選ラウンドは2面での進行です。


7.予選ラウンド2面進行(その2)
予選開始直前の選手ブリーフイングで進行の詳細説明の結果訂正があるかもしれませんが、推定するとこのような進行になります。

選手を2つのグループに分ける(仮に AグループとBグループとします)
飛行場はAライン、Bラインの二つを使用
10名のジャッジを2グループに分ける(仮に ジャッジ1とジャッジ2とします)

 
選手グループA 選手グループB
飛行場 ジャッジグループ 飛行場 ジャッジグループ
第一日目 Aライン ジャッジ1 Bライン ジャッジ2
第二日目 Bライン ジャッジ2 Aライン ジャッジ1
第三日目 Aライン ジャッジ2 Bライン ジャッジ1
第四日目 Bライン ジャッジ1 Aライン ジャッジ2


表の同色の部分が、同一飛行環境なので、これを1つのラウンドと考えればよい。
第1ラウンド   
第2ラウンド   
第3ラウンド   
第4ラウンド   

言い換えると、全選手が1日に1ラウンド行うのではなく、2日で2ラウンド行うと考えればよいのです。
第2日目に2ラウンド分が確定し、4日目に4ラウンド分が確定すると考えて、予選ラウンドの得点表を観ていてください。

8.雨等で不成立のラウンドがあった場合はどうなるのか
F3Cルールによると、"選手は4ラウンドの予選ラウンドに出場する権利を持つ"
とあります。 ということは、競技最初の2日間の間に雨天での不成立日が発生した場合、競技5日目に設定されている予備日を充て、それでも足りなければ決勝ラウンドの日程を使ってでも行うことになると考えられます。 
予選ラウンドは、全選手が出場し、国別の順位決定の意味もあるラウンド。
決勝ラウンドは上位選手に順位を上げるチャンスを与えるオプション。
と考えられます。

これまでの世界選手権は、天気には恵まれ不成立ラウンドは無かったと記憶しています。
今回の大会が大風等を食らい2日雨による不成立が発生すれば予備日では足りなくなります。
決勝ラウンドが無くなる可能性もあります。
実際にそのケースが発生した場合、陪審員(JURY)の判断で進行が決まると考えられます。

FAI選手権の会場では、陪審員(JURY)の権限は実に強大なのです。
(これ以上のフォントサイズがありませんが、この数倍大きく書きたいくらいです)
日本的にはJURYを陪審員と表記していますが中国チームの関係者によれば裁判長と表記するとのこと。 どちらかといえばその方があたっています。  ●裁者とまではいいませんけど。

注)
日本選手権では、あらかじめ雨天による不成立日が発生した場合の解釈をあらかじめ設定しています(日本版ルール)


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